脳性麻痺や先天性障害・重複障害

出産期から周産期のトラブルによって生じる脳性まひ、身体の発達の遅れを伴うような先天性の障害、重複障害と言われる状況で、出来る支援について書きます。

まずは、このページを読んで下さっている親御さん、はじめは本当にびっくりされましたよね。お疲れまです。そして日々の子育て、ご苦労様です。ありがとうございます。そのお気持ちの中で、まだ残っているものがあれば、お話いただければと思います。

ひと昔前の世代の親御さんまでには、この子を何とかしなければ、自分で面倒を見なけば、というお気持ちが強かったように思います。しかし、現代では、皆さん周りの情報を上手に使われて、頼るところは人に頼りながら、子育てをされているように思います。ただ、様々な医療ケアの必要なお子さんが増えたり、仕事をする女性が増えた現代では、子育てにかける労力が、大変になって来ていることも感じます。また周りとの違いや、おかあさん同士に馴染めない感じ、将来への不安や、思い通りにならないことに奪われる時間の多さに、苛立つ気持ちを持たれることも多いのではないでしょうか。そして子どもの幸せを願う気持ちと、育てる責任。

そんな中、何かしらをさらに調べられて、このページに出会っていただいたのだと思います。それぞれに得ていただけるものがあるように、個々のライフステージに応じで、出来るコミュニケーションへの支援や、心理的発達の支援について、書いていきます。
 


 

起きてくる様々な問題

 
子どもが、その子どもの持って生まれた能力そのままに、自分らしい人生を生きて欲しい。そのためにできることをしたい。それが親の希望ではないかと思います。
脳性麻痺など周産期の問題、先天性の疾患、重複障害を持つお子さんでは、その発達に配慮を要する様々な事柄が生まれて来ます。
メンタルにも健康に発達するということ。
医療や身体に配慮が必要なのと同時、こころや情動の発達、それはコミュニケーションから生まれて来ていたりしますが、それにも配慮が必要です。

身体の発達は必ずこころや認知の発達に影響しますし、全身状態は必ず生活に影響しています。相互関係で起きている事に配慮が必要です。
その具体的な意味について、今日は初期のコミュニケーションと主体性の発達という点について、書いてみます。

コミュニケーションの発達

まずは、乳・幼児期よりコミュニケーションが健全に発達するように保障してあげる必要があります。
生まれてすぐから、医療や入院など、びっくりすること、不安を煽られること、また物理的にお子さんと一緒に居られないこと、も多いかもしれません。
でも、乳児は、必ず身の回りのことに意識があります。

例えば、食事を取ることが可能になったら、抱っこをして、目を見ながら語りかけながら、授乳してあげてください。「かわいいね」「よく頑張ってるね」など、情動的な原初的コミュニケーションは、すべてのコミュニケーションの土台です。
 

Bates という人が分けた、コミュニケーションの発達の3段階、というのがあります。

1、聞き手効果段階
  お母さんや大人が、「ああ、きっとこう言うこうとを言っているんだわ」と思うことで、コミュニケーションが成り立つ段階。
  こうして欲しいと言ってるのかな、きっと喉が渇いたのかな、暑いのかな、そんなことを大人が想像し、答えることでコミュニケーションが成立する段階です。
2、意図的伝達段階
  子どもが、要求の実現や、人の注意をひくために、行動を行う段階です。通常であれば、物を渡す、見せる、指をさす、声を出す、など。しかし身体の不自由があると、これが運動として難しかったりで、その能力が育ちかけていても手段がない場合、大人の方が意図的にスイッチおもちゃや因果関係のあるおもちゃ、表出の手段を工夫して、この段階の発達を支える必要があります。
3、命題伝達段階
  ことばを使って、伝達を始める段階です。ことばが話せるようになるには、そのためのお口の動きと、認知的な発達がそろっている必要があります。目の前に物がなくても、そのものはずっとある、ということがわかっていること、同じ記号は、いつも同じものを指すということ、がわかっている必要があります。この前段階として、例えば、「いないいない」と言えば、バーと来る、など、同じことがいつも同じものを指している、ということがわかっている必要があります。また、ことばでお話をする前に、聞いて理解できる、という段階があります。お外行くよ、と言うと外を見る、新聞、と言うと新聞の方を見る、など、聞いて理解することが進んでいる必要があります。これに、お食事などがじぶんの口から取れること、様々な口腔の運動が重なって、様々な音を作ることが出来ることから、お話ができるようになっていきます。

 

大人の勘違いで、コミュニケーションを進める段階

 
まずは、全ては親の勘違いからです。^^
きっとわかっている、きっと伝わっている。そして伝わっているようなそぶりが見えたら、必ず返してあげてください。
あれ?今手を動かさなかった?喜んでなかった?
発達の原則ですが、強化したものが、現れるようになってきます。

これは、学習理論、でも説明が付きますし、もし、もっと神秘的な言い方の方がしっくり来られる方がいらしたら、認めたものが現れるということです。数ある行動の中から、意識が見て、止めたもの、認めたものが現れます。

人は人との相互作用の中で育ちます。なので、スルーされたものは意味のないもの、意味の取り出されなかったものとなり、認められたもの、「すごいねえ」「わあ、そうなんだ」と外界からフィードバックのあったもの、自分が外界に影響を及ぼせる、と感じられたものについては、より繰り返すようになります。

人は、主体的に生きる、ことをこのように初期の時点から学び始めています。
自分が、外界に影響を与えることができるということ。
これが、コミュニケーションにおいても、こころの発達においても、原点となります。

最初はしてもらっていた、お世話や、快である刺激・状況を、自ら催促するようになります。手を動かすと答えてもらえる、バタバタすると応じてもらえる、にっこりすると応じてもらえる、声を出すと応じてもらえる、視線を向けると応じてもらえる。

これらを、子どもは次第に意図的に使うようになります。
これが、意図的伝達段階の始まりです。

話は飛びますが、現代で大きな問題となっている うつ。
原因の一つは、無力感 であると言われます。
自分が何かを行って、それが外界に及ぼす効力がないということ。
それは、人を病気にしてしまうほどの、パワーを持つものなのです。
それほどまでに、人は動物として、自然に、主体であることを求めています。
 

意図的に伝えるということ

 
働きかける、応答される、ということから、コミュニケーションの雛型も出来ていきます。
外とやり取りをして、自分を実現したり、要求を叶えたりすることを学んでいくのです。

最初に大切なのは、成功体験です。
失敗が続くと、人は やってみることをやめてしまいます。
まずは、成功体験を繰り返してから。それから、「成功することもあるし、失敗することもある。」ということを学んでいくのです。順序として、必ずそうです。
成功する、快の体験をたくさんした後でのみ、失敗する、という嫌な感じも、抱えられるだけのメンタルの力が付いてくるのですね。

なので、意図的段階の初歩においては、まずは、子どもの意図が組んでもらえる体験をたくさんする必要があります。声を出したら、お母さんが来た。泣いたら、抱っこしてもらえた。笑ったらお母さんが笑った。

そして、この頃に起こる認知発達の重要な点は、因果関係がわかるようになる、ということです。
こうすれば、こうなる。それを関係付けて、覚えられるということです。
これには、自分で、自分の身体を使ってやってみる!という体験がとても重要になっています。
ここでも、人は、主体なんですね。
身体を持って、やってみること。
倒したら倒れた、叩いたら落ちた、お母さんが「キャ」と言った。
引っ張ったら来た、叩いたら鳴った。
こういった体験を、自分の身体を使って積み上げていきます。

脳性麻痺など身体にハンディのあるお子さんでは、こういった認知学習が、自分の身体を使って行うことが出来ない、出来にくいために難しいことがあります。そう言った場合、お子さんの動かせるところ、結果を起こせる部分を使って、こちらが結果を出せるような遊びを、用意する必要があります。スイッチおもちゃなども、このために使われたりします。
先天性のハンディのお子さんでは、そのあたりの発達がゆっくりであったり、あるいは感覚に偏りがあったりで、決まった遊びを繰り返すことになったりする場合があります。その場合も、因果関係のあるおもちゃに、一人一人の興味を見ながら、進めていきます。

そして、それを進めるときにとても大切なのが、必ず人が介在することです。
コミュニケーションの中で、行っていく、ということが大切です。
「行くよー」「それ」など、人が介在している、ということを、必ず意識させてあげながら進めます。

インターネットやユーチューブなどの媒体を使用するときも、それをかけっぱなしにするのでなく、人が関わりながら行っていくことが大切です。
刺激としては、とっても面白いものなので、現代では上手に活用していきたいものです。
 

お話の始まる段階

 
さて、意図的に物事を伝えるようになってきた、
因果関係、これ と あれ が対応しているということが、認知的にわかってきた、

という準備が整って、これまで指差しなどで伝えてきたその方法が、音声に変わった時、
命題伝達段階に入ります。
ことば、を使って、伝えるようになります。

あーあー とか、オー とか読んで答えてもらっていたものが、
いつも「ママ」と、呼ばれるようになります。

脳性麻痺などのお子さんでは、発音ができる、お口の状態になっているか、という別の問題がまた絡んできます。
発声をし、様々な、少なくとも幾つかの音を、つくり分けられるようになっているか、が ことば を使ったコミュニケーションの段階に入っていけるかの、もう一つの鍵となっています。

これには、お食事の場面や、食べ物を使って、お口の動き、運動能力を引き出しておく、というアプローチがあります。お食事の場面は、コミュニケーションの場面であり、運動発達を促せる場面であり、主体性を養える場面であり、そして栄養摂取であり、生活自体であり、文化を伝えるチャンスであり、
本当に様々な意味を持っています。

この場面を大切にして、お話しまでの準備を進めておくアプローチがあります。ご興味がおありの方は、ご相談ください。

発達の流れを、身体のハンディや、聴覚・視覚などの制限、入院などの経験、感覚的な偏りなどを持ちながら、経過していくことになります。
それには、本当に様々な配慮や技術が必要です。そして、人の発達 というものをどうとらえるのか、人を育てるって、どういうことだと思っているか、トータルに見る、幅広い人間観のようなものが、必ず必要になって来ます。
 
 

 
 
最後までお読みくださり、ありがとうございます。

 
 
こころとことばのセラピスト
子どもと大人の発達応援団
  清水宏美