発達障害のチェック お母さんと子どもの関係

今回も、発達障害のチェックと診断について書いていきたいと思います。

うちの子もしかして?! 発達障害のチェックについては、この記事にも書きました。

チェックには、行動の特徴とともに、知的な発達の視点を持つことがとても大切です。1歳の子に普通できないことは、1歳の子には出来ません(当たり前か)。その当たり前のことが、行動の問題に隠されて、ぐちゃぐちゃにわかりにくくなっている場合があります。行動の特徴だけでも、複雑なのに、知的な様相と絡み合っているので、一筋縄ではいきません。

この記事では、人の発達をさらに複雑にする、別の観点を取り上げます。母子関係、関係性の問題です。


 

Ⅰ.お母さんのせいではありません。

「お母さんのせいではありませんよ」
とても良く聴く言葉です。
子どもに何か問題があったとして、「お母さんのせいじゃない」

確かに、その通りなんです。感情的に、何だか 責められている感じがしますよね、子どもに何かあると。子どもが何かやらかすと。

なので、「お母さんのせいじゃ ありませんよ〜」というのは、常套句です。
そして、間違っていません。正しいです。

そして、間違ってもいます。

お母さんのせい の部分があるんです。せい というのは、理由でとか原因で、という言葉に置き換えた方が良いでしょうか。あるいは 関係性で という方が適切かもしれません。因果関係らしきものが、お子さんとお母さんの相互作用の中で存在します。
 
 

Ⅱ.お母さんのせい

 

お母さんの働きかけは、間違いなく、子どもに影響を与えます。

そいう意味で、お母さんが原因となっている部分、理由となっている部分はあります。お母さんの働きかけが、子どもに影響を与えないわけがないのです。
 

 

子どもがお母さんとの関係の中で学んでいること

さて、まずは読んでくださっている方を、驚かせることにしました。

お母さんとの関係が安定し、安心できる状態が築かれないと、どんなことが起こるかをまとめた、小林隆児先生の一連の研究があります。14年間の計81組の母子の治療の記録から、55組のデータが詳細に検討されたものです。それによると、「甘えたいのに甘えられない」状況が続くと、子どもにこんなことや、あんなことが起きると分析されています。そのあんなことや、こんなことを、ご紹介してみます。
 
 

(1) 甘えたいのに甘えられない → だから動き回る → 多動・注意転動

(2) 甘えたいのに甘えられない → だから同じことを繰り返す → 常同反復行動

(3) 甘えたいのに甘えられない → 過度に自立的に振る舞う → 自閉的、マイペース

(4) 甘えたいのに甘えられない → 相手の嫌がることをする → 挑戦的行動

(5) 甘えたいのに甘えられない → いい子になる → 心身症・神経症

(6) 甘えたいのに甘えられない → 媚びる・取り入る・見せつける → 操作的人格態度・人格障害?

(7) 甘えたいのに甘えられない → 他のものに注意・関心をそらす → 乖離反応

(8) 甘えたいのに甘えられない → 過度に従順に振る舞う → 自我障害

(9) 甘えたいのに甘えられない → 周囲に圧倒されて身動きが出来ない → カタトニア

(10) 甘えたいのに甘えられない → 一人で悦に入る → 軽躁状態

(11) 甘えたいのに甘えられない → 空想の世界に入る → 自閉、妄想

 
 
このうちの(1)~(3)は、発達障害と関係があるような症状、(4)は、行動障害、ひいては非行などにもつながる可能性のあるもの (5)は心身症や神経症症状 (6),(7)は虐待関連の病理と似ている症状 (8)〜(11)は、精神様の症状となります。

2017 小林 隆児 アタッチメントと発達の問題を「関係」から読み解く 西南学院大学 人間科学論集 13-1 383-406.

 
 
読んでいて、皆さんも身につまされるところがないですか?

そして、何だか、すごくないですか?

甘えたい、でも甘えられない。なんとか甘えてやろう。何とか自分に必要なものを、手に入れよう!その気持ちから、子どもは、というか人は、これだけのレパートリーを思いつくと言うのです。思いつくというか、実行する。まさに、命がけですよね。命をかけてまで、手に入れたいもの。それは人にとって、甘え、の感覚なのです。

例えば、子どもが一人で遊んでいます。全く周りに関心を示しません。黙々と遊びます。お母さんが来ても知らん顔。居ても全く関わろうとしません。これだけ見ると、この子は自閉スペクトラム症なのではと思います。しかし、お母さんが部屋を出て行こうとした途端、大泣きしたり血相を変えて飛びついて行ったりします。

すねて いるのです。関心がない振りをして、お母さんの気を引こうとしているのです。このように、関係性の中で見てみないと、その子どもの行動だけ見ていても、わからないことがあります。なので、同じように「他の人に興味関心を示さない」「他の子と遊ぼうとしない」という点に、チェックがついたとしても、それは自閉的な問題であるのではなく、関係の問題に起因していたりするのです。

それと同じように
(1)動き回り、多動、落ち着きがない  甘やかしてもらえないから、落ちつかず、所在なく動き回っている
(2)同じことを繰り返す 甘やかしてもらえないから、しつこく同じことを言う、繰り返す
(3)自閉的、マイペース 甘やかしてもらえないから、自分のペースを守ろうとする。頼ることをやめようとする
(4)問題行動を起す  甘えたいのに甘えられないから、相手の嫌がることをする。思春期以降には、非行に発展していくことにも注意が必要
(5)過剰にいい子になる  こうやったら、甘えさせてもらえるかなあ、と人の目ばかりを気にし、周りに合わせようとする。結果、心身症や神経症の症状が出ることがある。
(6)媚びたり、取り入ったり、見せつけるような行為をする  甘えたいのに甘えられないから、なんとか甘えようと、策を練る。その結果、それが固定化し、自分自身がわからなくなり、相手を操作することばかりに注意が向いたような状態や、それがパーソナリティー自体になってしまう。
(7)他のものに注意をそらす  欲しいものが得られないから、他のものに注意を逸らそうとする。その結果、自分の本当の望みがわからなくなり、生き生きと生きている感覚がなくなり、乖離障害のような状態になる。
(8)甘えたいために、過度に順応に振る舞う  そのため、自分、自我が育たず、自分がどうしたいのかわからず、自分を調整できない、自我障害となる。
(9)甘えたいのに甘えられないので 固まったような状態になる
(10)(11)甘えたいのに甘えられないから、一人で空想の世界に入り、気分を上げる  軽躁状態、妄想状態 

といった具合です。

子どもは、ある一定期間、確実に 依存した 状態を必要とします。それは 人の子どもにとって、必ず必要な段階であり、それを抜かして 発達 することはできないのです。それを十分に経過させないことは、精神疾患、神経症、発達障害様、様々な問題を起こします。それほど、人にとって 関わり とは、重要な問題なのです。

実際、大人である私たちにもありませんか?この人と居ると、すごく素直に自分が表現できて、自分のことが好きになれるのに、この人と居るとなんか反抗したくなる。嫌味の一つも言いたくなる。そんなことってありませんか?自分のどの面が引き出されているかは、相手によって変わってくる面があるのです。そして引き出された面が、子どもの中で育っていくのです。

そして子どもの場合、その引き出されたものが、自分のパーソナリティーとして、性格として、行動のパターンとして、定着していくのです。そしてそのパターンを雛形として、生涯「人」とかかわっていくことになるのです。特に親密な人との状態において。子どもはなんとかして、環境に適応しようとしているのです。依存をある一定の時期、十分に体験すること。それは人の子どもにとって、必要不可欠な発達の刺激なのです。

前の記事はこちら

続きはこちら

清水宏美(言語聴覚士)

Posted by kids-d